未来の仕事

HAID 標準

人類と AI の距離を 10 段階で測る、公開リファレンス基準(v1.0)

制定 2026-09-11 ・ HAID v1.0 ・ CC BY 4.0

「AI をどれだけの人が使っているか」を 1 つの利用率で答えると、分母と分子の取り方しだいで数字が動きます。HAID は代わりに、人と生成 AI の関係を行動で判定できる 10 の段階に分け、それぞれの段階にいる人数の分布として報告します。

段階は位置であって、優劣ではありません。上の段階ほど「進んでいる」わけでも、下の段階が「遅れている」わけでもありません。測るのは人であり、端末や契約の数ではありません。

定義は本ページ。世界の現状(各段階の人数)は 人類と AI の距離 — 現状 に四半期ごとに公開します。職業の側から AI を測る基準は AIOIS-10 です。

4 つの関係

10 の段階は 4 つの関係に分かれます。関係のあいだの境目は程度の差ではなく、種類の差です。同じ関係の中では、上の段階は下の段階の条件をすべて満たします。

AI が届いていない
無縁 Unreached
インターネットに届いていない、または届いていても AI の出力に触れていない。
第 1〜2 段階
自分が呼ぶ
道具 Tool
本人が呼んだときだけ AI が動く。呼ばなければ何も起きない。
第 3〜6 段階
向こうがいる
同席 Presence
呼ばなくても本人の文脈に接し、先回りして動く。本人の名で外に出ることもある。
第 7〜8 段階
分けられない
一体 Union
記憶や関係の置き場が AI 側にあり、切り離すと日常が成り立たない。
第 9〜10 段階

10 の段階

各段階の判定条件は、特定の製品や国に依存しない行動で書いてあります。「観測窓」はその行動をいつまでさかのぼって数えるか、「測り方」はその段階をどの等級のデータで測れるかです。

第 1 段階 未到達Not reached 無縁
インターネットを利用していない。
観測窓:ITU 定義・過去 3 か月 測り方:A 国際機関の統計(ITU・国連)
第 2 段階 圏内・未接触In reach, untouched 無縁
インターネットは利用するが、第 3 段階以上に該当しない。
観測窓:残差として算出 測り方:A 国際機関の統計から残差で出す
第 3 段階 見せられているShown 道具
頼んでいないのに、生成 AI が作った内容を見せられた。
観測窓:過去 30 日 測り方:B 事業者の公表値。上限は測れず、下限として扱う
第 4 段階 使うことがあるUses sometimes 道具
自分の意思で生成 AI に入力し、応答を受け取った。
観測窓:過去 30 日に 1 回以上 測り方:B を錨に、C 第三者パネルで補い、D 調査で交差検証
第 5 段階 日常の道具Everyday tool 道具
自分の意思で生成 AI に入力し、応答を受け取った。
観測窓:過去 7 日に 1 回以上 測り方:B を錨に、C 第三者パネルで補い、D 調査で交差検証
第 6 段階 任せているDelegates 道具
目的だけを伝え、複数手順の作業を生成 AI に実行させ、結果を自分で確かめた。
観測窓:過去 30 日に 1 回以上 測り方:B 事業者の公表値。現時点ではコーディング用エージェントのみ
第 7 段階 常に横にいるAlways alongside 同席
呼ばなくても本人の予定・連絡・記録などの文脈に接し、先回りして動く AI を日常的に使っている。
観測窓:過去 30 日 測り方:D 調査のみ。事業者の公表値は存在しない
第 8 段階 自分の名で動くActs in their name 同席
本人の名で外部(送信・購入・予約・交渉)に接する AI を使い、本人は結果を確認している。
観測窓:過去 30 日に 1 回以上 測り方:D 調査のみ。事業者の公表値は存在しない
第 9 段階 自分より自分を知るKnows them better than they do 一体
記憶・嗜好・人間関係の主たる保管場所が、本人の頭や紙ではなく AI 側にある。
観測窓:状態として判定 測り方:D 調査のみ。事業者の公表値は存在しない
第 10 段階 分けられないInseparable 一体
明日 AI が消えたとき、本人の一日が成り立たない。
観測窓:反事実で判定 測り方:D 調査のみ。事業者の公表値は存在しない

第 7 段階から上は、2026 年時点では公開データで人数を推定できません。これは基準の欠陥ではなく、現状の報告そのものです。段階の定義は、人数がゼロでも変えません。

判定の規則

Nesting
N(≥k) = 第 k 段階以上にいる人数。k が大きいほど単調に減る。
n(k) = N(≥k) − N(≥k+1)。n(1) から n(10) の合計は人類の総数に一致する。

用語の定義

生成 AIgenerative AI

入力に応じて文章、画像、音声、コードなどの新しい内容を作り出すシステム。検索結果の並べ替え、おすすめ表示、迷惑メール判定、予測変換は含まない。

触れるexposed

本人が頼んでいないのに、生成 AI が作った内容を見せられること。

話しかけるprompt

本人が自分の意思で生成 AI に入力し、応答を受け取ること。文字、音声、画像のいずれでもよい。

任せるdelegate

本人が目的を伝え、生成 AI が複数の手順を自律的に実行して結果を返すこと。手順の途中を本人が逐一指示した場合は「話しかける」とみなす。

対価payment

本人または本人の所属組織が、その人の利用のために支払う金銭。広告視聴は含まない。段階ではなく属性として扱う。

測定と報告の方法

確度と図示の規則

数字には必ず確度を添えます。確度は図の描き方も決めます。

実測 
統計機関の定義にもとづく実測値
残差 
他の段階から引いて出す値
下限のみ 
1 社の公表値だけで下限が決まり、上限は分からない
推定幅 
錨点と重なり率から低・中・高で推定できる
データなし 
公開データが存在しない
第 2 → 3 段階
AI が届いた AI arrives
第 6 → 7 段階
呼ぶ側から、呼ばれる側へ From calling to being called
第 8 → 9 段階
道具から、自分の一部へ From tool to part of oneself

境界事例(v1.0 の裁定)

判定に迷う場面の裁定です。事例は版を重ねて追加しますが、一度出した裁定は動かしません。

事例段階注記
検索結果の AI による概要を見た 第 3 段階
メッセージアプリの中で AI に自分から質問した 第 4 段階
1 行ずつのコード補完を使った 第 4 段階
コーディングエージェントに「このバグを直して」と任せ、差分を確認した 第 6 段階
会社が AI アシスタントを契約したが、本人は開いていない 第 2 段階 / 第 3 段階 見せられていれば第 3 段階。
会社契約の AI アシスタントを週に使っている 第 5 段階 対価は属性として別に記録する。
画像を生成した 第 4 段階
メール本文を AI に下書きさせ、自分で直して送った 第 4 段階 / 第 5 段階 送ったのは本人。頻度で 4 か 5。
AI が本人名義で返信を送り、本人は後で読んだ 第 8 段階
予測変換・迷惑メール判定・おすすめ表示 対象外 生成 AI に含めない。

準拠

完全準拠: 10 の段階すべてを、本標準の定義・観測窓・口径で、確度と出典を付けて報告する。

部分準拠: 一部の段階だけを報告する。ただし定義・観測窓・口径は変えない。表記例: 「HAID v1.0 に部分準拠(第 4・5 段階)」。

調査票に「過去 30 日に、自分から生成 AI に入力しましたか」「過去 7 日に」の 2 問を本標準の定義どおりに置けば、第 4・5 段階への部分準拠になる。

改定・引用・ライセンス

改定履歴

測らないもの(既知の限界)

職業の側から見た AI の影響は AIOIS-10 標準、日本の 556 職業への当てはめは 職業マップ自分の現在地 へ。