HAID 標準
人類と AI の距離を 10 段階で測る、公開リファレンス基準(v1.0)
「AI をどれだけの人が使っているか」を 1 つの利用率で答えると、分母と分子の取り方しだいで数字が動きます。HAID は代わりに、人と生成 AI の関係を行動で判定できる 10 の段階に分け、それぞれの段階にいる人数の分布として報告します。
段階は位置であって、優劣ではありません。上の段階ほど「進んでいる」わけでも、下の段階が「遅れている」わけでもありません。測るのは人であり、端末や契約の数ではありません。
定義は本ページ。世界の現状(各段階の人数)は 人類と AI の距離 — 現状 に四半期ごとに公開します。職業の側から AI を測る基準は AIOIS-10 です。
4 つの関係
10 の段階は 4 つの関係に分かれます。関係のあいだの境目は程度の差ではなく、種類の差です。同じ関係の中では、上の段階は下の段階の条件をすべて満たします。
10 の段階
各段階の判定条件は、特定の製品や国に依存しない行動で書いてあります。「観測窓」はその行動をいつまでさかのぼって数えるか、「測り方」はその段階をどの等級のデータで測れるかです。
第 7 段階から上は、2026 年時点では公開データで人数を推定できません。これは基準の欠陥ではなく、現状の報告そのものです。段階の定義は、人数がゼロでも変えません。
判定の規則
- 各人は、条件を満たす段階のうち最も高いものに属する。段階は第 1 から第 10 に向かって「AI に近い」と定義する。
- 集団については、第 k 段階以上にいる人数 N(≥k) と、ちょうど第 k 段階にいる人数 n(k) の両方を報告する。N(≥k) は k について単調に減る。n(1) から n(10) の合計は人類の総数に一致する。
- 分母は常に人類の総数とし、端末数・契約数・アカウント数を分母にしない。
n(k) = N(≥k) − N(≥k+1)。n(1) から n(10) の合計は人類の総数に一致する。
用語の定義
生成 AIgenerative AI
入力に応じて文章、画像、音声、コードなどの新しい内容を作り出すシステム。検索結果の並べ替え、おすすめ表示、迷惑メール判定、予測変換は含まない。
触れるexposed
本人が頼んでいないのに、生成 AI が作った内容を見せられること。
話しかけるprompt
本人が自分の意思で生成 AI に入力し、応答を受け取ること。文字、音声、画像のいずれでもよい。
任せるdelegate
本人が目的を伝え、生成 AI が複数の手順を自律的に実行して結果を返すこと。手順の途中を本人が逐一指示した場合は「話しかける」とみなす。
対価payment
本人または本人の所属組織が、その人の利用のために支払う金銭。広告視聴は含まない。段階ではなく属性として扱う。
測定と報告の方法
- データの 4 等級: A 政府・国際機関の統計 / B 事業者の公式発表 / C 第三者パネル / D 調査。各段階の数字は、どの等級を使ったかを明記する。
- 口径は 30 日。週次の数字を月次に直すときは、同じ事業者が同時に公表した比率、または出典を明記した調査の比率だけを使う。手書きの係数は使わない。
- 複数の製品にまたがる同一人物の重なりは、第 4・5 段階でのみ引く。重なり率は調査にもとづき、公開する。
- 各段階は低・中・高の 3 値で報告する。見出しの数字は有効数字 1 けた、表は 2 けた。
- 時点は用いた錨点の最新日付。四半期ごとに 1 回公開し、各回に版番号を付ける。過去の回は書き換えない。
確度と図示の規則
数字には必ず確度を添えます。確度は図の描き方も決めます。
- 実測
- 統計機関の定義にもとづく実測値
- 残差
- 他の段階から引いて出す値
- 下限のみ
- 1 社の公表値だけで下限が決まり、上限は分からない
- 推定幅
- 錨点と重なり率から低・中・高で推定できる
- データなし
- 公開データが存在しない
- 確度が「下限のみ」の段階は、隣の段階との境目を実線で描かない。点図では境目をぼかすか 1 つの帯にまとめ、幅を注記する。
- 人数が極端に少ない段階は、実面積では見えないため最小サイズで描き、「実際の割合より大きく描いている」と明記する。
- 4 つの関係の境目 3 本は、段階の境目より太く描く。
- 第 2 → 3 段階
- AI が届いた AI arrives
- 第 6 → 7 段階
- 呼ぶ側から、呼ばれる側へ From calling to being called
- 第 8 → 9 段階
- 道具から、自分の一部へ From tool to part of oneself
境界事例(v1.0 の裁定)
判定に迷う場面の裁定です。事例は版を重ねて追加しますが、一度出した裁定は動かしません。
| 事例 | 段階 | 注記 |
|---|---|---|
| 検索結果の AI による概要を見た | 第 3 段階 | |
| メッセージアプリの中で AI に自分から質問した | 第 4 段階 | |
| 1 行ずつのコード補完を使った | 第 4 段階 | |
| コーディングエージェントに「このバグを直して」と任せ、差分を確認した | 第 6 段階 | |
| 会社が AI アシスタントを契約したが、本人は開いていない | 第 2 段階 / 第 3 段階 | 見せられていれば第 3 段階。 |
| 会社契約の AI アシスタントを週に使っている | 第 5 段階 | 対価は属性として別に記録する。 |
| 画像を生成した | 第 4 段階 | |
| メール本文を AI に下書きさせ、自分で直して送った | 第 4 段階 / 第 5 段階 | 送ったのは本人。頻度で 4 か 5。 |
| AI が本人名義で返信を送り、本人は後で読んだ | 第 8 段階 | |
| 予測変換・迷惑メール判定・おすすめ表示 | 対象外 | 生成 AI に含めない。 |
準拠
完全準拠: 10 の段階すべてを、本標準の定義・観測窓・口径で、確度と出典を付けて報告する。
部分準拠: 一部の段階だけを報告する。ただし定義・観測窓・口径は変えない。表記例: 「HAID v1.0 に部分準拠(第 4・5 段階)」。
調査票に「過去 30 日に、自分から生成 AI に入力しましたか」「過去 7 日に」の 2 問を本標準の定義どおりに置けば、第 4・5 段階への部分準拠になる。
改定・引用・ライセンス
- 段階の番号は付け直さず、再利用しない。一度「第 7 段階」と引用されたら、その意味は変えない。
- 境界事例の追加は小版(v1.1)、段階の意味の変更は大版(v2.0)。旧版は消さずに残す。
- 将来より細かい区別が要るときは、段階の内側で枝分かれさせる(例: 8.1)。第 11 段階は作らない。第 10 段階は定義上の天井とする。
- 引用: mirai-shigoto.com「人類と AI の距離 10 段階(HAID)」v1.0。現状の数字を引くときは公開回(例: 2026-Q3)を添える。
- ライセンス:定義と公開データは CC BY 4.0。機械可読の定義は data.haid-spec.json。
改定履歴
- v1.0 — 2026-09-11 制定。
測らないもの(既知の限界)
- 仕事での利用は段階に含めない。世界全体の人数が存在しないため、各国の調査を参照として添えるにとどめる。
- 対価は段階ではなく属性。「第 4 段階以上のうち、対価を払っている人」として別に報告する。
- 脳と機械の直接接続のような身体的な関係は、この尺度の外に置く。
- AI そのものは分母に入れない。分母は人であり、これは版を重ねても変えない。
- 第 3 段階は 1 社の公表値だけで下限が決まるため、真の値はつねにそれより大きい。第 6 段階は現時点ではコーディング用のエージェントしか観測できない。
職業の側から見た AI の影響は AIOIS-10 標準、日本の 556 職業への当てはめは 職業マップ と 自分の現在地 へ。