未来の仕事

AIOIS-10 標準

AI が仕事に与える影響を 10 次元で測る、公開リファレンス基準(v1.0)

最終更新 2026-06-02 ・ AIOIS-10 v1.0(日本版)

「AI の影響」は 1 つの数字では表せません。仕事のやり方がどれだけ変わるかと、仕事そのものがなくなるかは、しばしば逆を向きます(経営者は AI に大きく変えられても、職を失う可能性は低い)。AIOIS-10 は影響のもとになる性質を 10 の独立した次元で測り、別々の問いに別々の答えを返します。

EMFO — 4 つの段階で考える

AI の影響は 4 段階を通って「働く場」への結果になります。各段階が前の段階をしぼり込むため、技術的に「AI にできる」だけでは影響を過大評価します。人間の強み摩擦こそが、単なる「AI 到達度」と AIOIS-10 を分けます。

① 到達
Exposure
AI はどこまで届くか(D1・D2)
② 人間の強み
Human Moat
AI に届いても人が残る部分(D3〜D7)
③ 摩擦
Friction
置きかえを妨げる壁(D7〜D9)
④ 結果
Outcome
最終的な仕事の増減(D10)

各次元は 0.0〜10.0 で「その性質がどれだけ強いか」を点にします(「影響」そのものではありません)。記号が性質の向きを表します。

影響を強める — 高いほど影響大 人間の強み — 高いほど人が有利・影響小 調整 — 置きかえが本当に進むかを左右

10 の次元

D1 頭脳・情報労働Cognitive Exposure ① 到達
文章・情報・分析・プログラムなど、現在の生成 AI が単独でほぼ完結できる仕事の割合。データ入力・機械翻訳・定型的な文章作成ほど高い。
D2 定型反復Routine ① 到達
ルールが定まり、繰り返しが多く、結果が予測できる度合い。従来型の自動化やソフトウェアでも置きかえやすい。
D3 身体・現場性Physical / On-site ② 人間の強み
身体動作・手先の器用さ・移動・現場での目視や手作業がどれだけ要るか。ロボットでしか置きかえられず、ソフトウェアより遅く高コスト。
D4 判断と責任Judgment & Accountability ② 人間の強み
正解のない局面での重い判断と、特定の人間が負うべき法的・倫理的な責任。
D5 対人・情動Interpersonal ② 人間の強み
対面のやりとり・共感・信頼構築・ケア・説得・交渉。人と人の関係そのものが価値になる度合い。
D6 創造性Creativity ② 人間の強み
既存の組み合わせ(生成 AI が得意)ではなく、真に新しいアイデア・作品・解を生み出す度合い。
D7 資格・安全の壁Regulatory Moat ③ 摩擦
免許・専門職規制が人間を要求する、あるいは失敗が人命に関わるため人間の立ち会いが要る度合い(◐ 調整 と ■ 強み の両面)。
D8 自動化の費用対効果Cost-Parity ③ 摩擦
自動化コスト(設備・導入)が、置きかえる人件費より安いか。安いほど置きかえが進む(▲ 影響 と ◐ 調整 の両面)。
D9 需給・制度Friction (local) ③ 摩擦
技術的に置きかえ可能でも、実際に置きかわるかを左右する地域要因。導入力・雇用慣行・人手の過不足。深刻な人手不足では AI は脅威ではなく助けになる。本標準で唯一、国・地域ごとに採点する項目。
D10 雇用の将来性Outlook ④ 結果
今後 5〜10 年でその仕事の人数・価値がどれだけ増減するか。AI による減少圧力と、新たに生まれる仕事の力を合わせて見る。

2 つの指数

変化の大きさ(Transformation)— 仕事のやり方が AI でどれだけ作り変えられるか。頭脳・情報の仕事ほど高い。本サイトのトップ指標「AI 影響」はこの値です。

Transformation
変化の大きさ = D1 と D2 の平均

仕事が減るリスク(Displacement-Risk)— 仕事そのものが減る・なくなる確率。「AI 到達度」が人間の強みを越えた分を、導入のしやすさと求人の見通しで調整します。

Displacement-Risk
AI 到達度 E = D1 と D2 の平均
人間の強み M = D3〜D7 の平均
導入のしやすさ P = D8 と D9 の平均(D9 が高い = 広がりやすい)
仕事が減るリスク = E ×(1 − M/10)×(0.6 + 0.4 ×(P + D10)/20) ※ 0〜10 に収める

結果は「2 つの指数 + 10 次元のレーダー」です。経営者は変化は大きいがリスクは低い、データ入力はどちらも高い、訪問介護員はどちらも低いと読めます。

データ入力 変化 9.2 ・ 減リスク 7.6
D1D2D3D4D5D6D7D8D9D10
訪問介護員 変化 3.0 ・ 減リスク 1.1
D1D2D3D4D5D6D7D8D9D10

採点のルール

世界共通 + 国ごと

AIOIS-10 が世界標準になれる理由:D1〜D8 と D10 は世界共通(仕事と AI の性質そのものなので、東京でもベルリンでもサンパウロでも同じ)。D9 だけが国ごとに変わる次元で、各国版は D9(と必要ならリスク式の重み)だけを付け直します。日本の深刻な人手不足は、D9 が低くなる一例です。

採点例(日本版・現行 AI 時点)

本サイトの採点(Opus 4.8、2026-05-30、D9=日本)からの抜粋。T=変化の大きさ、DR=仕事が減るリスク。

職業 D1D2D3D4D5D6D7D8D9D10 T DR
データ入力 9.59.00.60.30.00.70.84.46.67.9 9.2 7.6
翻訳者 9.54.70.64.32.04.82.87.77.25.9 7.1 4.4
会社経営者 7.01.72.48.46.45.04.85.55.03.2 4.4 1.5
外科医 4.04.66.29.58.95.49.13.85.52.8 4.3 0.7
訪問介護員 2.03.96.34.05.22.05.41.81.61.6 3.0 1.1

緑=働く人に有利・影響小、赤=影響大(■ 列は反転、◐ D9 は中立)。

経営者と外科医は頭を使う仕事で大きく変わるが安全(高い D4・D5・D7 が「仕事が減るリスク」を 1 前後に抑える)。介護員は D9(有効求人倍率 ≒ 28 の深刻な人手不足)と D3・D5 が「AI 到達度」を上回り守られています。「AI にできる」が実際に職を奪うのは、人間の強みがうすいデータ入力・翻訳だけです。

もとにした研究と注意点

AIOIS-10 はこれまでの研究を置きかえるのではなく、まとめ直したものです — 定型/非定型業務(Autor–Levy–Murnane 2003)→ D2、3 つの「AI が苦手なこと」(Frey & Osborne 2013)→ D3・D5・D6、機械学習による代替可能性(Brynjolfsson 2018)→ D1、代替の力 vs 創出の力(Acemoglu & Restrepo)→ D8・D10、AI がこなせる業務(Eloundou 2023)→ D1。新しい点は、「AI 到達度」から「働く場の結果」までを、人間の強み・摩擦という段階ではっきり繋ぐ EMFO の流れと、世界共通+国ごとの設計です。

注意:本標準は職業データにもとづく・現行 AI 時点の見立てであり、検証ずみの失職確率ではありません。採点手順・データの整え方は 評価プロセス を参照してください。